「ちょ、待て、2人共落ち着けって!!」

慌てた様な男の声が寒い部屋に響いたが、その声は何かに塞がれた様に掻き消され、静寂の中に水っぽい音が漏れる。明かりは点在していて足元が覚束ないという事は無かったけれども、腰の辺りに纏わりつく存在に男は身動きが取れなくなって、施される行為を大人しく享受するしか出来なかった。
「ん、…ふ、…」
「ねえねえ、ノノも」
「…今日は俺の順番だろう?」
「えー、ノノもするー」
「…元気だなーお前ら…」
ぐったりした様な声音で半ば諦めの表情を浮かべた、男女に挟まれた赤茶色の髪の男は、どうしてこうなった…と重苦しい溜め息を吐いた。その男を、2人の男女は不思議そうに眺めていた。



事の発端は半年程前に遡る。イーリス聖王クロムの右腕であり腹心であり半身とも言える軍師ルフレが邪竜ギムレーを消滅させる為にその身を犠牲にした事になり、長い戦いに終止符が打たれた。戦が終わればそれを生業とする職業の者はお役御免になる訳で、傭兵のグレゴもご多分に漏れず契約は解除となった。
彼はこの戦いの中でも特にこれと決めた伴侶を得なかった―今更得るつもりが無かった訳だが―ので、取り立てて養わなければならない相手が居る訳でもなく、だからまた自由きままに生きていくかーと思っていたら、昔世話になった西フェリアの王であるバジーリオから声が掛かった。曰く、フェリアでも屍兵が沸いているから2、3年うちで働け、との事だった。断る事を封じている様な言い方ではあったが衣食住を提供されるのであれば何も不服は無い提案であったので、グレゴも快く引き受けたのだ。
そのフェリアにはバジーリオが将来は自分の後継者にと言ったロンクーという黒髪の青年が居た。グレゴが彼と知り合った頃はまだ20にも満たぬ少年であったが、ペレジアやヴァルム帝国、ギムレーとの戦の中で流れた年月は少年を青年へと成長させた。己が強くなる為の経験には貪欲であったロンクーは昔バジーリオと唯一引き分けたというグレゴにも良く手合わせを挑んできていて、それなりに懇意にはしていた。グレゴも若い頃にバジーリオに挑んでいた身であったから懐かしく、それで付き合っていたいうのもある。初めは勝てなかったが、やがて引き分けに持ち込める程の力をつけてくれたバジーリオへの礼という意味合いもあった。
そういう経緯で交流があったロンクーは、グレゴがペレジアの砂漠でギムレー教団に雇われていた時に囚われていたマムクートのノノを妻にした。グレゴは特に驚きはしなかったのだが、従軍している非戦闘員の女性達は落胆の色を見せていて、あいつモテるんだから結婚はもう少し待ちゃ良かったのになーと要らぬ感想を抱いたものだ。ノノはノノでロンクーと結婚したとは言え、グレゴにはそれまでと変わらず遊んでーとねだってきていたので、良く遊んでやっていた。ノノはとてもグレゴに懐いていたから、周囲の者達もこれといって変な顔をする事は無かった。バジーリオにフェリアに来いと言われたのも、あの2人も居るし丁度良いだろ、という事であるらしかった。どうもグレゴはロンクーとノノの保護者に見立てられてしまうらしく、それは彼にとって釈然としなかったものの、否定も出来ないので言い返した事が無い。
そんなこんなでグレゴは西フェリアに身を寄せる事になったのだが、王が戻り、不在だった間に屍兵だけでなく統治が及ばない者達により荒れた地方も少なからずあり、その討伐や様子を探る為の役目を仰せつかったグレゴは城に居る事よりも地方に赴く事が多かった。10日出ては3日城に滞在、その後にまた半月程出るといった様な過ごし方をしていて、何度目かの地方派遣の際にロンクーも来る事になったので、ノノが我儘を通して一緒についてきたのだ。元々1人で行動する事が多かったグレゴにしてみれば城で大人しくしてくれている方が良いと思ったが、こうなるとノノは頑として聞かないと彼もロンクーも知っていたし、彼女も立派に戦える戦士であるから承諾した。何でもノノは寒がりで、寒いフェリアでは1人で寝られないのだと言う。仲のよろしいこって、とグレゴが呆れ顔で言ってもノノはふーんだ、と言っただけだった。
否、そこまでは良いのだ。グレゴとしては別段何も困った事は無かった。問題はそこからなのだ。その時の3人の目的地はフェリア港だったのだが、勿論西フェリア城から1日で到着出来る筈もなく、途中の街で宿に泊まった。当然夫婦は一部屋、自分は一部屋で寝るものだとグレゴが思っていると、何故かロンクーは一部屋しか予約して来なかった。
何で一部屋なんだ、何が悲しゅうてお前ら夫婦が寝てる隣のベッドで寝にゃならんのだとグレゴが抗議すると、ノノはみんなで一緒に寝るんでしょ?と驚愕してしまう様な事を言ってきた。一部屋しか借りなかったロンクーの思考も理解に苦しむものだったがノノの思考も全く理解出来ず、思わずグレゴが素っ頓狂な声をあげてしまったのも無理はないだろう。いや普通は夫婦一緒に寝るだろ、そこに赤の他人が一緒に寝るスペースは無いだろ、考えてみろお前らバジーリオさんと一緒には寝ないだろ、と懇々と説き伏せたものの、ノノの「一緒に寝るのー!」の一言で終了されてしまった。
常日頃から思っていたが、ノノは彼女の未来から来たという娘よりも聞き分けが無い。それは千年という長い間、ほぼ1人で生きていたからという事に起因している様ではあるけれども、流石にこれは常識が無さすぎる。だからと言って頭ごなしに叱るのも良くないという事を弟が居たグレゴは分かっていたから、少しずつ分かって貰うしかねえか…と渋々その日は一緒に寝る事にしたのだ。余り楽しくは無いがノノを挟んで寝れば良い。
しかし、そう思っていたら2人は何の疑問も無く、さも当たり前の様にグレゴを挟んで寝た。グレゴは元々仰向けではなく利き腕である右腕を下にして寝る為に困惑したのだが、ノノが前から、ロンクーが後ろから擦り寄り満足そうに「ぬくい」と言ってきたので何だこいつら子供かと思ってしまい、彼ら2人が寝静まったら抜け出して隣のベッドで寝るという選択肢を早々に諦めた。随分昔、グレゴの弟が存命であった頃、寒ければ弟もそうやって擦り寄って寝たものだったからだ。流石に成人した男が後ろに寄り添っているというのはぞっとしなかったけれども。こういう時はとっとと寝てさっさと起きるに限るぜ、と顰めっ面のまま眠ったグレゴは、しかし眠りに落ちて程なくしてその眠りを妨げられた。2人の、体を弄る手によって。
多分あれは強姦と言っても差し支えないとグレゴは思っている。抵抗しようと思えば出来たし、止めさせようとすれば恐らく止めさせる事も出来た。だから強姦と言うよりは和姦であったのかも知れないのだが、ノノのリボンで後ろ手に縛られてしまっては引き千切る事も出来なかったし、どこで覚えてきたのかロンクーから挿入された挙句にノノに跨がれてしまい、散々に抱かれたと言うより犯された。気持ち良い事は嫌いではないし寧ろ好きとは言え、男のプライドを粉々にされてしまった気がして思わず泣いてしまった程だ。まさかこの年で野郎に掘られるたぁ思わなかったぜ…と、終わった後にもう体を動かすのも嫌だったので大人しくノノの体に凭れたままロンクーに体を拭いて貰いながらぐったりしていたグレゴは、何だか全てがどうでも良くなってそのまま寝た。
色々面倒になっていたので聞くのも億劫になっていたのだが、一応グレゴは何のつもりだ、と朝起きた2人に問い質した。すると、2人はきょとんとした顔でだって好きだからと答えた。好きだからってやって良い事悪い事の区別くらいはつくだろ…とグレゴはがっくり項垂れた訳なのだが、そんな彼をノノは前から抱き締めキスをしてきたしロンクーも後ろから抱いて項にキスをしてきたので、今何を言っても無駄か、とその場は納得は出来なかったが諦めた。見た目に反してノノもロンクーも捕食者であったらしい。
ただ、この年で、とグレゴは思ったが、正直なところ今更ガタガタ言う様な年でもない、と思ったのも事実だ。長い間1人で生きてきた彼も襲われた経験だってある。その時はまだ若かったので今よりはまだ納得はいったが―否、無理矢理自分に納得させただけだが―、本当にこの年になって、と思うと全てがどうでも良くなってしまった。40才前後にもなって思わないだろう、普通は。
なのでその時は無防備だった俺も悪かったがもうするなよ、と苦い顔をして忠告したのだが、ノノもロンクーも首を傾げて何故、と言ってきた。グレゴにしてみれば何故も何もねえよという思いだったけれども、本気で2人には分からなかった様で、それからというもの折りを見ては説得というか説教というか、そういった事をグレゴは2人にしてきたのだが、一向に考えが改まる気配も無く今に至る。
そんなに嫌なら逃げれば良いのに、という意見もあるかも知れない。しかし元が面倒臭がりで楽をしたがるグレゴであったので、衣食住を提供され且つ給金が貰え、たまに危険な仕事をしなければならないとは言ってもあの戦を戦い抜いた戦士である彼にしてみれば大した事はない。要は、グレゴにとっては「そこさえ目を瞑れば文句は無い職場」だったのだ。彼の中の男のプライドは、安定した収入を前にして消え去ってしまった。
ただ、自分が突っ込まれる分には大した問題は無い(既に彼の感覚は麻痺していて、挿入される事は特に何の問題も無いと思う様になっていた)のだが、ノノが跨がってくる事にはかなりの抵抗があった。妊娠したらどーすんだ、あんたの旦那じゃなくて俺の子供が生まれたら困るだろ、と二度目の際に言ったら、彼女はどっちがお父さんでもノノの子供だよ?と言い、ロンクーも俺もノノの子供ならどっちでも良い、と至極真面目な顔で言った。いやお前らが良くても俺が良くねぇし子供が可哀想だろ…とまたグレゴは説明したのだが、やはり2人には分からなかった様だった。若者(ノノは違うが幼いと言っても差し支えないだろう)の思考回路は分からねぇ、これがジェネレーションギャップとかいうもんなのかと思わずグレゴが頭を抱えた程だ。ノノとロンクーの思考回路が世間一般とかけ離れていると言うより、グレゴの事に関して思考回路がかけ離れているだけなのだが、そんな事は当人達には分からない。グレゴに分かるのは「取り敢えずこの2人はおかしい」という事であって、自分もおかしいのだという事は分かっていなかった。



さて、場面は冒頭に戻る。西フェリアの領地も広く、それ故に地方に派遣される事も多いグレゴは勿論1人で出立する事もある。今回も20日程城を出ていたのであるが、戻ってバジーリオに地方の現状報告をして次回の派遣先の打ち合わせをし、お疲れさん、ゆっくり休めと労われたので宛てがわれている自室に戻って休もうと思っていたら2人に見つかり、自室ではなくて2人の自室に連れ込まれたという訳だ。戻ったばかりで疲れていて、抵抗する気力も失せていたグレゴはしかし、部屋に入るなり抱き寄せられ体を弄られたので慌ててしまった。
「あーのなあ…たった20日居なかっただけだろぉ?!」
「ちがうよぉ、20日も居なかったんだよ?」
「あんたにとっちゃ20日なんて一瞬だろうが」
「俺には長かった」
「あっそ… …だからちょっと待てっ…てぇ!!」
何でこの2人はこんなに聞き分けがねえんだとグレゴは忌々しそうにロンクーの手を引き剥がそうとしたのだが、項を舐められシャツをたくしあげられて露わになった腹筋に頬擦りをされて変な声が出てしまった。女を買う事も多いグレゴは玄人の女性から鍛えられた所為かそういう事をされてもある程度の耐性はあるのだけれども、不意打ちの様に下半身を弄られては堪らない。
「ま、待て、頼むから待て!」
「20日も待ったよ?」
「じゃあそこのベッド行くまで待てるだろぉ?!」
「ノノ、グレゴは疲れているから立ったままは嫌なんだそうだ。
 ベッドに連れていこう、な?」
「はーい」
「………」
何と言うか色々突っ込みどころが満載な訳なのだが、グレゴにはもうその気力も無い。ロンクーに支えられてのろのろとベッドへと向かい、座ると、ロンクーがご丁寧に跪いて靴を脱がせてくれた。その間にノノも器用にブーツを脱ぎ、ベッドに上がりながらグレゴに抱き着きキスをしてきた。
「…ぷぁ、」
幼い容姿とは言えノノも女であるので、男に比べれば唇が柔らかい。食む様に啄まれ、グレゴが思わず口を開けると、小さな舌がするりと入ってきて更に深く口付けられた。グレゴも疲れていてもキス程度ならば応戦出来るのだが、自分からノノにどうこうするのは抵抗がある。いくらロンクーが何も言わないと言ってもグレゴは気が引けるのだ。ただ、何度あんたの旦那はそっちだろとノノに言っても聞かないので言うのも止めてしまった。
「っ!」
唇がまだ解放されない内から下半身を刺激され、思わず出た声が口の中で反響する。靴を脱がせたロンクーが何の遠慮も無くズボンの上から股間を弄り、食む。気が急くのかも知れないがせめて脱がせろと言いたいのだが、口が塞がれているのでは言う事も出来なくて、グレゴはノノの舌から逃れる様に呻いた。
「? どうしたの?」
「ど、どうしたも何も、おい、脱がせてからやれ!」
「ん…?俺に言っているのか?」
「お前以外誰が居るんだぁ?!」
口をやっと離して貰えたグレゴは足元に膝をついているロンクーに怒鳴ったのだが、彼は自分に言われている事に気が付いていなかったらしい。不思議そうな顔をして見上げてきたロンクーは言われた事を理解すると、素直にベルトを外して下着ごとズボンを脱がせた。それと同時にノノがにこにこしながらシャツも脱がせたので、グレゴ1人だけがほぼ全裸になる。しかし何度も言うがグレゴにとってみれば今更なので羞恥心も何もなく、もう寝転がって良いかな…と半ば投げ遣りな思考で枕の方を見遣ってから勝手にごろりとその大きな体を横たえた。本音を言えば眠ってしまいたいところだが、それをこの2人は許してくれないだろう。…否、眠ってしまってもこの2人なら抱きかねない。
「グレゴ、傷が増えたね?」
「んー…?あぁ、それ…ちょーっとヘマ、して、な…っ」
「もう痛くない?へーき?」
「だい、じょ…ぶ、だ…っあぁ、あ、」
寝転がったグレゴの上半身に見慣れない新しい傷を認めて、ノノがその傷跡を指先で撫でながら尋ねてきたので何気なくグレゴも答えたのだが、答えている最中にロンクーが僅かにもたげたグレゴの陰茎を根本から先端まで舌先で舐め上げてきたものだから言葉が途切れがちになってしまい、結局は嬌声に変わった。
彼らに抱かれる様になってからというものグレゴは性処理の為に女を買う事も無くなっていたし、自分で処理をする事も無くなっていたものだから、城を離れノノとロンクーの居ない所へ暫く滞在しても面倒になってしまって女を買わなくなってしまっていた。故にグレゴは20日間処理をしていない。若い頃ならば耐えられなかったかも知れないが、今は性欲が沸き起こるという年でもなくなったから何という事はないのだけれども、流石に溜まっている状態でいきなり口の奉仕をされると体全身で反応してしまう。
「ふ…っうぅ、…い…っ?!」
「…ああ、すまない」
「おま、自分も男なら歯ぁ立てると半端無く痛ぇって分かるだろぉ?!」
「でもグレゴはちょっと痛い方が好きだね?」
「いぁ…っ!」
突然痛みを感じてグレゴが体を跳ねさせるとロンクーが謝ってきたので、どうやら陰茎を口に含んで唇で愛撫している最中に軽く歯を立てたらしいと分かる。しかしそこに歯を立てられると激痛が走るという事はロンクーだって重々承知の筈で、グレゴが抗議の声を上げたのだが、ノノが小さな指で勃ち上がった彼の乳首を遠慮無く抓んだものだからその抗議も掻き消された。指の腹できりきりと締め上げられ痛みを確かに感じているのに、ロンクーの手の中にあるグレゴの陰茎は既に先走りの体液を漏らしている。
ノノが言った通り、グレゴは少し痛みを感じるくらいの刺激が好きだ。だがそれを言った事は無いし、言ったところでそうして欲しいと要求している様な気がするので言える筈もなかった。そもそも自分がこうやって下になるという事自体がこの2人に抱かれる様になるまで殆ど無かった事であったから、グレゴ自身も気付いていなかったのだ。
「い、いて、ノノ、ちょ、…―――!!」
潰そうとしているのではないかというくらいの力で乳首を捻り上げられ、止めさせようとノノの細い肩を掴んだのだが、再度柔らかな唇で口を塞がれた挙句に突然足をぐいと持ち上げられ、何の躊躇いもなく陰嚢を口に含まれた後に引き締まった筋肉を指で左右に割って現れた孔に十分唾液を絡ませた舌が這ったものだから、ノノの肩を掴んだグレゴの手は簡単に彼女の手に絡め取られ押さえつけられた。襞を丁寧に這う舌のぬめる感触がぞわぞわとグレゴの下半身を犯し、思考を奪っていく。
「んん、んぁ、はあ、ああぁ…!」
「大丈夫?痛い?」
「い、いぁ、……は…っ!」
舐めながら指を挿れられ、見た目は優男だが体のパーツはそれなりに大きなロンクーの指の節まで内部の肉壁が感じ取り、多少苦しさを感じて眉根を寄せたグレゴの眉間にノノがキスをしながら彼の陰茎に触れた。ノノも一時期斧などを使っていたので小さな手には肉刺の痕があったのだが、矢張りロンクーの手とは違って握られる感触が柔らかく、じんとした痛みと柔らかな快感が下半身で混じり合ってどれに反応して良いのか分からない。歯を食いしばっていると更に指が増え粘膜が擦れる音が嫌でも耳に入って、彼は思わず頭を抱えるついでに耳も塞いでしまった。
ごり、ごり、という感触と共に内部を押し広げ、少しでも筋肉を解そうとする指の動きがダイレクトに肉を伝って脳に響く。まさか尻で快感を得る様になるとは思わなかったが、この2人に良い様に調教されただけの様な気もしないでもない、とグレゴは思っていたけれども、気がするのではなくてそうなのだという事に彼の思考は追いつかなかった。
「んー…やっぱり食べちゃお」
「ふへ?なん… …っぅああ、あぁ、あ、やめ、あああぁっ!」
塞いでも尚するりと耳に入り込んできたノノの声に間抜けな声を出したグレゴは、しかし次に下半身に襲った快感に頭を抱えたまま背を反らせた。ノノが手で触っていた陰茎の先をちろりと舐めたかと思うと、小さな口に亀頭を頬張ったのだ。タイミング良く、というか狙ったのだと思うのだが、ロンクーも指で孔の内部の男が感じる部位を強く擦り上げてきたものだから、グレゴは逃げる様に身を捩ろうとする。しかし、2人はそれを許しはしなかった。ロンクーは下半身をがっちりと捕まえ、ノノは陰茎を口に含んだまま彼の体に跨り、両足で挟んで動きを封じたのだ。
「よせ、ああ、で、出る、イく…っ …ふぁ…」
溜まっていた所為で我慢が利かず、少しざらついた舌が亀頭の割れ目や陰茎の筋を丁寧に撫でる感触に奥底にある熱い塊を押し上がってくるのを感じ、グレゴが限界を口にすると、ノノは口から陰茎を解放しロンクーは指を全部引き抜いた。あと少しの刺激で達する事が出来るのにおあずけを食らい、再度彼は頭を抱えて顔を隠す。物欲しそうな顔をしていたら嫌だと、僅かに残る理性が彼をそうさせた。
「……うああああぁぁ、あぐ、…か…はぁ…っ!!」
だが何の打診も無く熱いものが孔に押し当てられたかと思うと、肉を割るかの様に熱の塊が侵入してきて、その理性も飛んだ。熱い塊が侵入し内壁の肉を抉じ開け、恐らくロンクーとしてはゆっくり進めてくれているのだろうがグレゴにしてみればその動きについていけなくて、呼吸が上手く出来ずに息苦しさも感じる。更に元は挿入する為の器官ではない部分に異物を差し込まれている訳なので、圧迫感もあって尚苦しい。
「グレゴ、痛い?」
「い、痛ぇっつーか、くるし…っあああぁ!」
余りの息苦しさに思わず噎せて咳き込んでしまったグレゴの、少し萎れた陰茎を見てノノが尋ねてきたので息も絶え絶えに彼は答えていたのだが、最後は悲鳴に変わった。ノノが再度その陰茎を口に含んだからだ。その時に無意識に下半身に力が入ってしまった様で、思い切りロンクーの陰茎を締め付けてしまったらしく、痛いのか気持ち良いのかは分からないがロンクーの口から呻き声の様なものが聞こえた。が、生憎とグレゴはそんな事には構っていられない。
「ひ、ぅあ、ああぁ、…っあ、イ、っく、あぁ、―――!!」
「う…っ!」
挿入の苦しさで多少萎えたとは言え、達する直前まで追い上げられていた為に、熱く感じる口腔内で扱かれ、舌先で割れ目を抉られ、吸い上げられては耐える事が出来なくて、グレゴは頭の下に敷かれた枕を抱え込む様にして全身を大きく跳ねさせノノの口の中に精を吐き出した。久々の射精だった所為か吐き出された精液は多く、ノノの小さな口には収まりきらなかった様で、彼女は口から溢しながらも体を起こしてそのまま目の前のロンクーに口付ける。締め付けられ過ぎて動きが止まってしまっていたロンクーは、口移しで与えられた精液を飲み下しながら絡んでくるノノの舌を受け止め、音を立てて解放した。
「…濃いな」
「誰ともしてなかったしょーこだね?」
「そうだな」
自分の上で頓珍漢な会話をしている2人に「んな気力あるか」と、荒い息を繰り返しているグレゴは言いたかったのだが、言うのも億劫で結局口を閉ざした。射精の余韻で腰が震え、妙に頭が冴え渡っていく。男は女と違って射精してしまうとある程度性的興奮が落ち着いてしまうから仕方ない事なのだが、この状況で頭が冴えても嬉しくはないとグレゴは思う。
「ねえねえ、ノノもしたい」
「ん…、」
何度か啄む様なキスをロンクーとしていたかと思うと、おもむろにノノは跨がっているグレゴをちらと見てから穿いているズボンを脱ぎながら言った。寒がりな彼女はフェリアに来てからはきちんと着込む様になっていて、以前の様な下着にも見える服は他所の国に行く時以外は着なくなっていて、最初こそ見慣れない格好だとグレゴは思っていたのだが最近は今の格好の方がこちらが寒い思いをしなくて良い。

―いや、んな事ぁどうでも良くて。

「…ちょ、待て、待てノノ、イったばっかだから無理だ、やめ…」
ズボンと一緒に下着まで脱いだノノと、挿入したまま抜けない様にベッドに座ったロンクーに嫌な予感がしたグレゴが顔を引き攣らせていると、果たして彼の予感は的中してしまった様で、彼女はグレゴににっこりと笑うとグレゴの肩を押さえ付けて動きを封じる。そして動きを止めたままのロンクーがグレゴの陰茎を持ち、ノノの膣に押し当てると、彼女はゆっくりと自分の中へと沈めていった。
「ふ…っんん、あ…は、入った…ぁ…」
「あああぁぁ、あ、ま、動く、な、…っああぁ…!」
口での奉仕で興奮したのか、慣らしてもいない筈なのにノノの内部は既に濡れてかなり滑りが良くなっており、容易にグレゴの陰茎をくわえ込んだ。射精したばかりなのに挿入出来る程の硬さを保っていたのは単に溜まっていただけではなくてノノがロンクーに口付けている間もその柔らかな手で扱いていたからなのだが、敏感になっている状態で膣内に誘い込まれては堪らない。陰茎が溶けてしまいそうだ。
「ひ、ぃ、あ、う、動くな、やめろ、やめてくれ…っ!」
「どっちに言っている?ノノか?俺か?」
「あ、あぁ、ど、どっちもだっ!」
「断る」
「――――――!!」
グレゴは首を横に振りながら2人に懇願したのだが、ロンクーから最奥を突かれて悲鳴が出そうになったので思い切り自分の手を噛んだ。きつく閉じた目尻から涙が溢れ、口の中に鉄の味が広がる。2人同時に相手をする事はほぼ無くて、特にノノ相手はグレゴが嫌がるので彼女も余り強要しないのだが、矢張り20日居なかった事が災いしてしまっているらしい。手から血が出ている事に気が付いたのか、ノノはその手をそっと取って丁寧に血を舐めた。
「グレゴ泣いちゃった…?もうちょっと、ゆっくり、する?」
「ぬ、抜け、頼む、嫌だ、いや…っああぁ!!」
涙混じりの懇願は、しかしどちらに対して抜けと言っているのかさえ伝えられず、一層膨らんだロンクーの陰茎が遠慮無く内壁を抉って声を掻き消していく。ノノは体をぴたりと寄せてグレゴの顔を流れる汗や涙を丹念に舐めながら額や眉間、目尻にキスをし、小さく喘ぎながら腰を前後に揺らした。その度に彼女の膣内の肉壁を捲り上げ、愛液が陰茎に絡んでいくのが分かる。噛み痕がついたグレゴの手をノノが握り、空いた手をロンクーが握ったのだが、もうグレゴには握り返す力も振り払う力も無かった。
「ぅぐ、うあぁ、あ、あっ、ひ…っい…!」
「ん…っ、はぁ、あ、イく…っ」
「ちょ、ま…っあああぁ…!!」
「っふにゅ…っ!!」
段々と腰の動きが速くなってきていたロンクーが奥を突く度に頭の奥がちかちかと白くなっていたのだが、限界を口にされて抜けと言う前に熱いものが腹の中に流れ込んできたものだから、グレゴは無意識の内に逃れようとして大きく身を捩った。しかしその際にノノの内部を抉ってしまった様で、口婬するだけでも挿入出来る程濡らしてしまうくらい感じやすい彼女はグレゴの体にしがみついて肩に顔を埋め、全身を震わせて達してしまった。蕩けそうな程熱くてぬめる内壁できゅうと締め上げられグレゴは思わず射精しそうになってしまったのだが、ロンクーが痛みで顔を歪める程下半身に力を篭めて寸でで耐えた。理性は飛んでいたけれども、どうしても彼女の膣内に射精するのは自分の良心の呵責に耐えられなかったからだ。
「ぬ、抜け、2人共、す、すぐ抜け」
「…でもグレゴ、まだでしょ?」
「良いから抜けっ!」
恐らく自分を気遣ってくれているのだろうノノが顔を撫でながら言ってくれたのだが、余裕の無かったグレゴは思わず声を荒げてしまった。びくっと怯えた様な表情を見せたノノにああしまったと思ったけれども、先に陰茎を引き抜いたロンクーが彼女の体を抱き起こして大丈夫だと言う様にキスをしながらゆっくりとノノの体をグレゴから離し、抜いてくれた。グレゴはそれに安堵して両手で顔を覆い、途切れ途切れに溜息を吐く。彼はまだ達していなかったがそんな事はどうでも良くなる程度には安堵していた。
「あ、あーの、なぁ、お前らが、良くても、お、俺が嫌なんだ」
「…ノノの子供がお前の子供になるかも知れない事がか?」
「な、何度も言っただろ、嫌だ、お前も嫌がれ」
ロンクーが胡座をかいてノノを後ろから抱く様にして座らせ、グレゴが落ち着くのを待つ。彼は震える体をゆっくりと起こすと、シーツを手繰り寄せて下半身を隠した。今更ではあるけれども。
「こ、この際掘られんのは我慢するけどよ、俺ぁ他人の嫁孕ますのは、絶対ぇ嫌だぞ…」
「…でもノノ、グレゴのあの顔、好きだなあ」
「俺に挿れられるのはまだ良いらしいからそれで我慢するか?」
「うー…」
まだ納得出来ない様な顔をしているノノは、頬を膨らませて足を抱える。この2人は自分のどこを気に入ったのかと疑問に思うが、グレゴはもうそれ以上考えたくなかった。とにかくノノを孕ませるのだけは嫌だという意思を飲んで貰う所からだ。今までもその意思を強く伝えていたから殆ど挿入には至らなかった訳だが、たった20日居なかっただけでこの様では身がもたない。
「…まあ、それはまた後でちゃんと話そう。取り敢えず今は」
「グレゴをいーっぱいきもちよくしてあげるね?」
「え、ちょ、結構だ!やめ…っあぁ!!」
余り腑に落ちてないノノと顔を見合わせたロンクーは、彼女が何を訴えているのか分かった様でこっくりと頷いて軽くキスをすると、小さな体を下ろしてからグレゴの下半身を覆ったシーツを思い切り剥がした。それと同時にノノが無邪気に抱き着き、不意打ちを食らったグレゴの大きな体は再度ベッドに沈む。まだ隆起したままの陰茎をゆるりと扱かれ反応した体を恨めしく思ったグレゴは、もうこいつら駄目だ、駄目だけど説得するしかねえわ、逃げても絶対ぇ追い掛けてくるな…と半ば諦めにも似た笑いしか出て来なかった。



尚、余談であるが、その後ノノが身篭り出産するまでの3年間(どうやらマムクートは出産も時間が掛かるらしかった)、ノノへの挿入だけは嫌だという条件を飲んで貰っていたものの気が気でなかったグレゴは、生まれてきた女児の髪が綺麗な黒であった事に心底安堵し、ナーガに心底感謝したそうだ。