恥知らずの夜

 柔らかい肉と熱くぬめる舌に包み込まれ、執拗に擦られて一層強く吸われ、堪えきれず精を吐き出すと、飲み込みきれなかったのだろう白濁した体液が薄い唇を汚して垂れる。それを拭う姿を見て彼は口の中に出してしまった事と飲ませてしまった事、汚してしまった事を謝ろうとしたのだが、男が赤い舌でちろりと唇を拭い、片目で見上げてきたので、蛇に睨まれた蛙の様に硬直して言葉を失った。
 だが男が見せ付ける様に口を広げ、全て飲んだと言わんばかりに口内を見せ開示したものだから、その熱と頬肉の柔らかさを享受していた肉棒が快感を反芻して反応してしまった。恥ずかしすぎて死にたい、と荒い息のまま呻くと、先端の割れ目からまた垂れた透明な体液を指先で掬われて腰がびくりと跳ね、興奮のせいで帯電した静電気で髪からぱちりと音がした。
「若いな、まだ元気におねだりしてくれているが」
「あ、の、……す、すみま、せん、あの……」
「君だけ善くなるのは不公平だな?」
「う、うぅ、はぃ……」
「私のも可愛がってくれるかい?」
「は、い、」
 彼の股の間から身を乗り出し、翠の目を覗き込みながら言う男の股間は紛れもなく膨らんでおり、唇が触れるぎりぎりの距離まで近付けると二人の唇の間に軽い振動が齎された。触れれば、放電する。そうと思った彼は離れようとしたけれども鈍色の目に捕らわれて上手く体が動かず、結局青白い光を放って唇は塞がれた。膝に跨った男の膨らみが擦り付けられ、腰が、否、体の中がぞわりと戦慄く。このズボンの下の、膨らみを形成しているものの形を、彼の体は「覚えて」いた。
「あ、の……」
「何だね」
「くだ、さい、ぼ、ぼく、僕の中に、あの、」
「君を女にして良いんだな?」
「はい、はい、して、ください、お願い、します」
 口の中だけでなく体の奥底まで蹂躙されたくてねだる様に腿を股間に擦り付けると、男ははしたない、と咎めて降りてしまった。だが目付きは紛う事なく捕食者のそれとなっており、彼は大きな体を固い台の上に横たえて上目遣いで男を見た。

「ください、今だけ、僕だけの男になってください、……クロサイト先生」

 彼のそのあざとい頼みは、しかし男をその気にさせるには十分だったらしく、男は薄く笑って長い白衣を脱ぎ捨てた。閉じられた夢の中の世界ではその白衣の様に恥も外聞も打ち捨てられ、彼は首筋に寄せられた口の熱に無様な喘ぎを漏らし、小さな放電と共に再度勃ち上がったものの先端から体液を零した。