指先の欲望

 腹の上に跨ったまま手を取る。その指先に軽く口付けて、舌先で触れる。少ししょっぱい様な、苦い様な、そんな味がしたけれども、構わず口の中に指を導いた。ささくれが舌に触れる度にくぐもった声が聞こえ、痛みを感じているのだろう体が微かに強張るのが分かった。
 口に入れたり、出したり、掌の肉刺の痕を甘噛みしたりしながら指の股に舌を滑らせる。じゅ、じゅる、ちゅぷ、わざと音を立てて舐め、人差し指と中指を同時に咥えて吸い上げれば、尻に当たる物が反応して硬くなっていくのを感じた。煽る様にしゃぶる手を両手で持ち、見せ付ける様に舌を出し唾液で濡れた指を視界に映せる様にしてやると、見上げる目が細められた。感じているのは恥辱か興奮か、どちらにせよ股間は確かに反応していると分かる。ただ、反応しているのは下にいる彼だけではなく、指を口に咥えて舐っているこちらも同じ事だ。口の中が一番 感じるので、指を舐るだけでも腰が震える。
 掌を垂れ流れ手首を濡らす唾液を音を立てて一際強く吸えば、微かに鬱血した痕が残った。それを咎める様に股間に伸びた手を制しながら、逆に尻を押し付け下にある硬いものを布越しに擦る。熱い吐息はどちらのものであったか、今はどうでも良い。口の中の頬肉を短い爪で優しく引っ掻かれてびくりと背筋が強張り、歯茎を指の腹で軽く押されて腰が曲がる。ぞわぞわと腰から項に上がる快感に体を倒してしまわない様にと、寝台の上で彷徨っている手の上に自分の手を乗せ、体重を支えた。
 お互いのズボンの下でむくむくと立派に勃ち上がっているそれを押し付け合う様に擦り付ければ、喘ぎが下からも自分の口からも漏れ出て唾液が顎鬚を濡らした。それを見たのか、それとも堪らなくなったのか、口の中に三本指を捻じ込まれ、無様にも顔を快感に歪めて体を震わせてしまった。達したのかを尋ねる瞳に、さて、とおどけて肩を竦める。だが股間の熱さ、体の震え、上気した顔では誤魔化しようがない。お互い、これでは治まる筈もないだろう。寝台に倒れこむ様に引き寄せられた体は、それでもまだ覆い被さる形だ。夜はまだ、始まったばかりだった。