疑似情事遊戯

 両手首を押さえつけ、僅かに押し返す力が伝わってきただけの抵抗とも呼べない抵抗に、思わず目を細めて笑う。重なった口の中をやや乱暴に暴き、逃げる舌を絡め取って吸い上げる。薄い唇は苦しげに空気を求め、少しでも呼吸が出来る様にと身動ぐ細い体を封じる為に、ぐいと下半身を押し付けると驚きが混ざった呻き声が聞こえた。
 既に硬くなったそれが分かる程に押し付け、擦れば、目の前の澄んだ目が見る間に揺らいで潤んでいく。布が擦れる音は静かな部屋に良く響き、また唾液が絡む音と相まって、随分と卑猥なものに聞こえた。その目に、その音に、その体温に、堪らず手を放して両足を強引に広げさせて抱え上げ、挿入するかの様にぐんと押し付ける。すると、今度こそ本気で抵抗され、両肩を掴まれ体を離された。
 白い肌の顔を青くし、言葉も無く首を振っているその目には明らかに怯えの色が浮かんでおり、最後の一線は絶対に越えたくないという意志をはっきりと示している。こちらも越えてしまえば一生閉じ込めて誰にも会わせず外にも出さなくしてしまいそうだから、越えるつもりはない。ただ、この反応が見たくてやっているだけだ。
 口元で笑ってからその手を取り、細い手首を噛む。そうすると不意を突かれたと感じたのか、一瞬だけ力が抜けたのを察知し、再び覆い被さって下半身を擦り付け合った。自分のものだけではなくて布越しに触れたそれも硬く、お互い興奮している事を知らしめていた。
 ズボンの下は、どうなっているだろうな。小声で尋ねると、知らん、と素っ気ない声で、そっぽを向かれて返事をされた。このまま射精寸前まで焦らすのも良いかもしれない。焦らせば焦らす程、切羽詰まった声で懇願する様に喘いでくれるから、今日はこのまま、この体勢で可愛がろう。

「はぁ、ああぁ、クロ、クロぉ…っ」

可愛い可愛い僕の弟。今夜はどれだけ遊ぼうか。