夜明け前

 後ろから覗き込む様に手の中にあるものを見る。成熟しているとは言い切れないそれは、しかし服の裾が汚れない様にと震える手で持ち、股を閉じてしまわぬ為に必死で我慢している弟が紛れもなく男であるという事を証明していた。先端から漏れる、ぬるぬるとした体液を竿に伸ばしくびれを優しく擦れば、ひん、と泣くかの様な声を上げて可愛い反応を見せてくれる。
 この年で寝小便をした、と、夜も明けないうちに言いに来た弟は、漏らした事よりその体液が白かった事に驚いた様で、両親を起こすのも嫌だと思ったのか僕の部屋に来たらしかった。体が弱いせいで学び舎にろくに通えていない彼は、性教育も殆ど受けていない。そうか精通を知らないか、と思った僕は、病気ではないから心配するなと慰め、どういう経緯でその現象が起こるのかも教えた。そして、自分で処理をする事も必要だとも、また教えた。ただ、別にやり方を手取り足取り教える必要は無かったのに、今こうしているのは我ながらおかしいとは思う。
「あ、ぅ、……あ、あ、そ、そこ、だめ」
「うん、ここ気持ち良いな?」
「き、きもちいい、から、だめ、は、離して、クロ、こすっちゃ、だめ」
「何で?」
「だ、って、……」
「漏れそう?」
「う、ん……」
 次々に溢れ出る透明な先走りを指の腹で割れ目に擦り付けると、弟がいやいやする様に首を横に振り、呂律が回らないかの声で止めろと懇願する。さっき精通したばかりだ、覚醒した状態での射精は経験が無い筈だから、小便が漏れると勘違いしているのだろう。僕はぴくぴくと震えている赤くなった耳を軽く噛み、また小さな悲鳴を上げた弟のそれを包んだ手を容赦なく上下させた。
「や、っだ、やだ、漏れ、る、クロ、やめて、やめ、いやっ……!」
「うん、気持ち良いな、僕に白いおしっこ見せて?」
「やぁ、だ、だめ、だめ、漏れる、ああぁ、クロ、クロ、……っ!」
 精液、ではなく、わざと小便という表現を使うと、案の定嫌がって僕の手から逃れようとした弟の体を足も使って絡め取り、手の中のぐちゃぐちゃに濡れたそれをぎゅうと握る。すると、弟は僕の名前を呼びながら絶頂した。量は多くないが手にべったりとついた精液は濃くて粘度が高く、僕の腰がぶるっと震えた。……射精はしなかったが、僕も達してしまった。
「……父さんと母さんには秘密な?」
「ない、しょ……?」
「うん、僕とお前の内緒事だ」
 荒い息を上げ僕に背を凭れて射精の余韻を味わっている弟の耳元で囁くと、譫言の様に彼が聞き返す。僕はそれに頷いてから、弟の体を反転させて寝転んだ。
「内緒な?」
「……うん」
 そして念を押す様に再度言うと、今度こそ弟が頷いた。僕はその回答に満足すると、弟を抱き寄せて目を閉じた。夜明けにはまだ早い。もう少し、弟を独り占めして眠っても良いだろう。